鼻歌を聞きとめられる。しかもイントロ。
「なんでその歌なんですか!」
「え? 何の歌に聞こえました?」
「探しものはなんですかー、ですよね」
大正解。
現時点での僕の最大の幸せは、社会不適合 ー社会が求める仕事の最低基準すら満たすことが出来ないー であると、第三者から指摘されたことがないということなんだろう。もしくは職場のねじれ。
己の生活を集団で支える 「職場」 という特殊な環境では、各々がそれを大事 (おおごと) としてとらえざるを得ない、そうとらえるよう、自衛が働くように仕向けられている。それが、わずかな位相のずれというものだ。君のとっての位相と、僕らにとっての位相は、少しばかりその空間が異なっていたらしい。
さぁ、それは君にとって這いつくばる価値あるものなのか。
君の舌は、床の上の埃を舐め取っているレベルにまでおかしくなってしまったのかもしれない。君はそれをなんでもないかのように笑って答えるから、僕らは鈍感であるからしてそれを大事 (おおごと) ととらえず、そして君の舌の機能の全てを奪ってしまおうとしているのかもしれない。
さぁ、引導を渡そう。
夢の中へ行こう、夢の中へ行こうと、呪文のように繰り返し、僕は自衛というもののために1時間だけイッてしまったふりをする。僕への引導を渡すことすら想像できないくせに、君への引導を渡す用意をしなくてはならないからだ。
手を取るのではなく、手を放す覚悟を植え付けるために、わずか1時間、繰り返し繰り返し笑い歌っている。失われようとしている君の味蕾に、だめ押しの焼きごてを押しつけることになるかもしれない。僕が。
だからせめて自分の部屋の中でだけは、現実への引導を渡してくれる夢を探しに、何十回でもそこへと誘ってくれるだろう笑いを唱えているのだ。自分の位相とやらに自信のカケラすら持てずにいる僕が、君の位相を評価・否定する。這いつくばっている僕の生活を守るために、這いつくばっている君を切り放す。何も大したことはない。今いるここが夢の一部で、夢が続くことはあり得ないから、僕は簡単に君を切り放すことができるだろう。