ラジオを聴いていたら、このアルバムに収録されている曲のコード進行とまったく同じ曲が流れていた。たぶんその曲が元ネタなんだろうけど。ということで CD の墓場から引っ張り出して、ここ数日聴いていたアルバム。リリース当時は結構お気に入りだった。
今になって、このアルバムが好きだった理由がよく分かった。リズムトラック、それも生ドラムを使っている曲が、圧倒的に好みなんだ。
サンプリングされた音を使って緻密に構築されるリズムトラックがもたらす快感は、理屈じゃなくて耳と身体がよく知っている。一方、人間の手による揺らぎのないドラミングというのは、サンプリング音源とはまったく異なったクロックを、人の身体に作用させるような気がする。 「グルーヴ」 やら 「ヴァイブス」 ってやつだね。身体の中で、自分の好きなように勝手に翻訳される揺らぎなんだろう。
スタジアムを意識したロックドラムや、圧倒的な手数を誇るドラミングはそれはそれで素晴らしいけれども、それとはまた別の次元で、淡々と刻まれていく軽快なドラムというのも、間違いのないシグナルの明滅にも似てたまらないんだよね。人間の身体による仕事なのに、変な色気を出さないのがまたいいのかもしれない。
もちろん、この時期の NOKKO のボーカルも、 REBECCA を終えた勢いを駆って脂がのりにのりまくっているので気持ちいいのだ。
で、次の 3 曲が生ドラムのトラック。今聴いても、やっぱり好きだ。
tr.3 Don't Hold Back
曲そのものは赤面しちゃうくらいに 「あの当時のかっこよさ」 なのだけれど、それは愛嬌ということで。
で、このドラムはスティックとスネアとがアタックする瞬間に、腕に向かって反作用のショットを軽やかに発生させている感じ。そのフィードバックを意識した瞬間に次のアタックに入れるという BPM とリズムだから、たまらなくうきうきしちゃうよね。
特に 4 拍目の裏の裏に入っているオモチャが、ウキウキ増感エッセンスになっている。だからなのか、 Rap パートは重さが変わるよね。その意識が妙に手堅いというか、繊細なんだよな。
Drums : Steve Wolf
tr.5 Oh Yeah
サビのコード進行がめちゃくちゃツボな一曲、
ドラムはこれまたシンプル。スネア、キック、ライドだけで一通りの用が足りちゃってるのがいい! クラッシュをたまにしか使わないから、その瞬間だけに彩度の高いエネルギーが飛び散っていく演出につながっているんだよね。
リズムそのものは、オーソドックスにいかにさりげなく細かく分断させるかということに専念している感じ。そのくせ、普通なら入ってくるはずのフィルインを無視しているのもまたいい。
こういったドラムを聴いていると、モニター上に表示されるグラフを眺めているような信頼感が漂ってきてたまらないんだよな。
ところでスネアは二種類の音を使ってない? それともショットの場所を巧みに変えてる?
Drums:Russell Batiste
tr.6 奇跡のウェディングマーチ (Blow Up Mix)
一昔前なら、初めてドラムセットを前にした少年は、まずエイトビートに挑戦してみて目を輝かせるんだろうけれども、今はハウスっぽい感じのリズムを叩こうとするんだろうな。少なくとも僕はそうかも。セットを前にして座ると、こんなリズムを叩いているな。
では、このリズムを誰でも簡単に叩けるかというと、そうはいかない。このドラムは表情を終止変えることなく、ストイックに貫かれているんだもの。
ハイハットの刻みが、もう、ギリギリの体脂肪だよね。揺らがせる要素が何もない。オープンクローズをむやみにひけらかすことなく、そのくせクローズの中にあるアクセントが、変に潰れなくて上品。こういうハイハットを刻めたら、そりゃさぞかし気持ちいいんだろうな。
プレイに酔いしれてついつい色気を出しちゃう、そんなドラムとは全くの対極にある刻みっぷりがたまらない。このリズムを素人が叩こうとすると、むやみめたらに散らかして片づける、そんな自作自演の派手な演出にしちゃうのだ。
Drums:Gota Yashiki
cf.
NOKKO "I Will catch U." P:1993