2001年06月18日

おまわりまいにちぐーるぐる

休日、午前 4 時前。壁に囲まれる道に従い進むままに車体が東に向かうならば、藍色の領域が広がっていく空が目に入る。夏至間近。右車線を壮快に駆け抜けていた車が、示し合わせたかのように突然姿を消した。首都高速環状線内回り。終わりかけた CD を、直線区間の間に差し替える。回り巡る道を一通り楽しんだ後、僕はその巨大なロータリーから抜け出そうとしていた。複雑な立体交差と急な上り坂と、ビルの隙間を抜ける回廊を外れるジャンクション。そこに差しかかった時、何かが耳元で囁いた。

今だよ。

気がつくと、一度は右に出したウインカーをキャンセルして、左に点け直していた。これまで経験したことのないクリアラップ。フロントガラスに車は見えない。バックミラーに車はいない。それでも 5 速は残し、無難な 4 速で次々にやってくるコーナーを抜ける。いくら息を止めてこらえても、タイヤが限界を超えれば僕は車もろともおしゃかになる。それでも 100km/h でコーナーに入った。分流では車体の欠けたバイクが 2 台、パトカーの陰に転がっている。それも一瞬のこと。右車線を走ると、前にスローな車が現われる。左から回り込んですぐに右へ。あってはいけないラインを、ウインカーとほぼ同時にステアリングへと届け、その度に僕を乗せた車体がワンテンポ遅く荷重移動に反応する。

ロードノイズがカーステレオの低音を打ち消し、続くアスファルトと断片的な舗道の継ぎ目に負けじと、ギターのストロークだけがきつく耳に突き刺さる。今晩はもう走り尽くしたのだろうか、クルージングに入っているセブンを左目に、谷町ジャンクションから一ノ橋へ。合流での工事。セオリー通りの左車線が空いていない。合流しようとするトラックを端に見据え、右足に力を込める。高いヘッドライトがバックミラー一杯に飛び込み、すぐに遠くなる。ギターは曲を置いてけぼりにし、狂ったようにコードを鳴らす。それ以外何も聞こえていない。再び東に向かうから、朝焼けは雲の隙間から広がっていく。毛細管現象の限界までにしみいる光が、視界一杯に広がり始める。一台、また一台、朝が事故を招く。渋滞情報板に増えていく × 印を見ると、囁かれたゴール地点に戻ってくるのはあっという間の話。

クリアラップは久しぶりにやってきたビジターへの褒美だっとして、回りきるのに 2 曲といらない小さな都市。人の渦で言葉一つ間違えて目を回す人たち、車の流れにハンドル一つ間違えて命を回す人たち。全てを後目に 7 号へと外れる。向かう先は空港かゴルフ場か。増えてきた高級車に紛れ、更に広がる陽光へと向かい、車のまどろむ速度にまかせる。 110km/h 。都市が延ばしただらしのない腕に乗り、ようやくギターが曲になる。肺に詰めこんだアクアラングを引き抜くため息。首を鳴らして肩を動かす。そろそろ目が SOS を出し始め、張っていた気を晴らそうと、歌いながら降りるインターを探して先を見つめる。

cf.
coaltar of the deepers "NO THANK YOU" P:2001