1.
このところのカヴァーブームで 「今では音楽界全体の作曲能力そのものが枯渇しているのだ」 と口走るおバカさんは、その言葉のあまりもの中身のなさを認識した上で、たっぷりと反省するように。
いかに薄い言葉であるかを検証したければ、年次ごとにヒットチャート上位数十曲を抽出し、かつ、その曲がヒットしていた年と、その曲をリアルタイムに聴いていた層の年齢とを比較した上で、それぞれの年齢層の記憶に残っている曲数や曲目は、年齢層によって大して変わりがないのではないか、という仮説を元に検証するように。
「昔の曲が良かった」 と口走るのは、単に、今現在ヒットしている楽曲を認知する機会が失われているだけにすぎないだろうという仮説。世代ごとの共通認識となる楽曲が、年齢を経るに従って記憶の中で淘汰された結果、相対的に強く記憶されている度合いが強いだけじゃないかと思われ。その辺、うまく得点化したりするのが、サブカルチャー的学者の仕事じゃないかしらん。それとも、そういう論文、すでにあるのかしらん。
2.
発展的解釈。
楽曲が 「その曲がヒットしている時にリアルタイムに生きていた人間に連れ去られてしまった」 ことによって、楽曲自体がその下の世代に降りてこない、という考え方もできなくない?
楽曲の送り手 (販売者・放送媒体) は、リアルタイムな楽曲に時間を割くように出来ているから、 「古い曲」 となってしまう速度が恐ろしいことになっていると考えてみるのはどうだろう。
音楽的に敏感な感性を持つ (はずである) 現役のアーティストが、 「古いものとされてしまった」 音楽に、今持っている自分の感性 (らしきもの) を流し込んでみて、その結果どのようなリアクションが来るか、もしくはアーティスト自身がどこまで満足できるか、という行動が、少しばかり流行ってるんじゃないか、と見ると、ものの考え方としてはなかなか健全な気がするけれど、どんなもんだろう。
ということで、僕は 「BS 日本のうた」 を応援しています。
リンク先トップページより引用:
「なぜかやすらぎと癒しを感じながら、聞くことができるのは、演歌・歌謡曲の名曲に多いようです」
お前もか。
3.
クールダウンしてみよう。
ということを、先々週の 「BS 日本のうた」 で披露された山口百恵の曲を聴いて思っていたのでした。
企画盤としてリリースされた山口百恵のベストアルバムは持っていることは持っているんだけれども、そこに入っていなかった曲を聴いて 「あぁ、こんな曲もあったんだぁ」 と新発見できるのは、その番組の中で歌手がカヴァーしていてくれたからこそなのだから。 「愛染橋」 という曲は聴いたことがなかった。
番組が終わった後に、洗濯物をたたみながらしみじみと山口百恵のアルバムを聴いていたのだ。カヴァーされた曲を聴くことによって、原曲のイメージをもう一度思い出そうということ。頭の中でデフォルメされた記憶の垢にまみれたイメージは、正常な判断力を失わせる。
ということで 「カヴァーカヴァーって目くじら立てるなよな」 ということ。
4.
疲れてきた。
とはいっても、カヴァーされた曲をリアルタイムで聴いていた人間、かつ、その曲に思い入れのある人間が、カヴァーアーティスト自体をひっくるめて誹謗することがあるのはなかなか不思議な感じ。出来上がってきた楽曲を批判するならばともかくも。
誹謗している暇があるならば、あなたが好きなオリジナルの楽曲を繰り返し聴いた方が、行動としては健全だと思う。かつ 「ほら、こっちのバージョンの方がいいってば、聴いてみ」 とかいって、知人に無理矢理押しつけてみるとか。
僕も、そういう 「曲を経験した」 覚えがありますゆえに、この逃避方法はおすすめであります。さらには、新時代バージョンとして出来上がってきた曲を聴いて、「あぁ、そういう解釈もあったか」 なんてしたり顔でうなずけるようになったら、あなたの音楽経験値は確実にアップしております。
だからこそ、一つの楽曲を違うアレンジで聴かせる、などというなかなか挑戦的な企画 (アレンジ自体は常にバタ臭いんだが) をしてくる NHK 「BS 日本のうた」 制作スタッフは、中年向けの番組を作っていると見せつつも、なかなか芯にはアヴァンギャルドなものがあるようにも思えるのです。
5.
その他、ゴミメモ。
・ カヴァーは NG でトリビュートは OK なんてのも、納得しがたい。
・ 日本人がカヴァーした洋楽はダメだなんて一絡げな解釈も、 (大筋では認めるが) 納得しがたい。
・ それをいうなら、ジャニーズJr. という存在は、ジャニーズのドル箱スターが歌った楽曲を愛して止まない人間からすれば、憎さはあれども可愛さのカケラもない存在であってもよいはずだ。
・ 「夜もヒッパレ」 という番組を 「芸能人のカラオケタイムを見せられているだけ」 と割り切っちゃっている人はもったいない。
・ 良くできているカヴァーと、イマイチなカヴァー、を比較した結果を俺的コメントで述べるならば、後者の方が多い。
以上。
文中のリンク先 URL、引用文は 05.11.02 現在