期限が目の前に迫っている仕事を持ち込んだトンカツ屋。カウンターの隅に陣取り、食べ終えた皿を脇にどかして、赤ペンを手にする。ここ 2 日ほどの頭は仕事モードに切り替わり、週末でもそれは止まることなく続いている。むろん、期限が翌々日の週明けとあっては切り替えざるを得ない。
僕が一番苦手とする数分間の集中も何のその、目の前にある紙に没入していると、突然子どもの歌声が油とばしのファン音に乗って滑り込んだ。声の主を捜せばテーブル席には子ども一人の親子連れ。小学校に入りたてくらいだろうか、Tシャツ姿の男の子の前に両親らしき人物が座っている。トンカツ屋でコーラの小瓶。髪を短く刈りそろえた子は、皿の上のキャベツを箸でつかみながらもう一度同じフレーズを繰り返す。
ウォウウォウウォウォーウォー
歌われるまでは BGM の存在にすら気づかなかった。カツを口に入れている時でさえも、目は紙を追っていた。箸を時折ペンに持ち替えていた。
ウォウウォウウォウォーウォー
大人は一人で祭りの後を笑え。