閉塞というほどではないけれども、疲労骨折にも似た真綿の縄で、緩やかに縛られつつあるような感覚。黄昏時を向こうに見遣り、 10℃ を切るようになると、嗅覚と皮膚が同時に空を仰ごうとするものだから、足はすぐに地から離れようとする。
車を手に入れてからの数年、冬の夜におとなしく家にいようとしたことがない。幼い頃から自分を作り上げていた放浪の虫は、世を知るとともに大人しくなるどころか、歳を重ねるごとに自分の生活を崩してしまう癌に成長している。
スピードメータの威を借り、音で増長させた虫をいい気にさせてから憑かせ、自分に責任は課さない。それでもどうしたことか。その夜は何かが違い、 「そういう気分でもないな」 と一言、まっすぐに部屋へと戻ってきた。買ったばかりの CD を開け、取り込んだままだった洗濯物をたたむ。
間もなく虫が正体を現し、防ぎようもなく部屋を埋めつくしたのが見えた。転嫁させるための言い訳を、また再びここに見つけたことにしばし喜びをおぼえ、目の前で踊るがままの姿に合わせて、自分を擁護し、時計を隅に押しやった。