2003年01月08日

2003.01.08

彼よりも 2 回多く呟いて、さらに首をすくめた。お下がりでもらったスノボのウェアのせいで、シャツの中は汗で蒸れている。汗をかいたのは、 1時間ほど前の話だ。

大して寒くもないはずなのに、寒さを唱えてみたせいで、そんな気にさせられてしまう。これこそが呪文。

MD から聞こえているのは、たぶん 8 曲目あたり。自転車置き場のあかりは何年経っても不足気味で、うっかりしてると足元を見失う。足元ばかり見ているせいで行きすぎてしまう手前になって、自分の自転車が朝と変わらずそこにあることを確認する。後輪の空気がいつも不足気味の、青い自転車。

改札口からは 3 分と離れていないのに、首はすっかりウェアの中で縮こまり、背負ったバッグは、手袋を出そうと右肩だけ外したはずみで、肩から滑り降ちた。ウォークマンのコードも、引っ張られて落ちる。

ため息を一つ吐く。気を取り直して、ロックを外す。ペダルを一つ踏み込むと、脂肪の薄いおしりから、アスファルトの凹凸が直につたわってきた。

首をすくめすぎたから、肩が上へと浮き上がろうとする。少し大きなバッグが、それを押さえつける。そして前身が縮んでいく。小さく小さく、中へ。

ペダルに乗せた足だって、伸びきろうとはしない。これが、ノロノロと自転車をこぐメカニズム。横断歩道の青信号が点滅する。ノロノロと進む青い自転車。ノロノロと進む、それにまたがる自分。

寒い寒い寒い寒い寒い

45 度先を見ると、ハンドルはぶれてしまう。それよりも浅く、膝の動きがわかるところに目を定めてもう一度呟く。寒いと呟くのは独り言。寒いと囁くのはどういう時?

あともう一つ角を曲がれば、自分の部屋も近い。間違いなく 10 曲目。

cf.
GRAPEVINE "another sky" P:2002