2003年12月16日

WHEN POP HITS THE FAN / SUITE CHIC (2003)

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安室奈美恵の 「Put'Em Up」 を初めて聴いたときに、 「これで安室はまたしばらく安泰だ」 となぜか胸を撫で下ろしたのを覚えている。小室サウンドを利用して一時代を築きながらも、ずっと印象として持ち続けていた違和感が、氷解から納得に至ったのかもしれない。氷解を導いたのが、この SUITE CHIC での活動だった。

参加ミュージシャンのラインナップを見れば、誰もが簡単に 「ああ、今風のなんちゃって黒い感じ?」 とまずは予想できそうなものだが、その中身といえば、予想以上に曲同士のエゴが強く衝突し合う作品に仕上がっていた。

SUITE CHIC という名前を借りた安室は、曲という人の壁を押しのけながら腰で歩いていく、そんな強靱な女性の姿を映している。それでいて、tr.5 で見せるように、ふっと胸元に転がり込んでくるようなキュートな女性であったりもする。その変幻自在な女性像に、知らないうちにくらっときてしまう。ここでの安室奈美恵は猫だ。

なぜ安室奈美恵だったのか。これがぱっと出の新人による作品だったなら、それこそ今風のなんちゃってブラックという印象だけで終わる。 「この手の新人」 には、とうの昔に食傷が過ぎている。

ここ数年の安室奈美恵といえば、本来の活動にスポットが当てられる機会は少なく、プライベートなスキャンダルばかりが報じられていた。が、過去の栄光と醜聞は、新人アーティストでは決して得ることのできない財産と凄味になる。これを逆手に取ったのではないだろうか。だからこそ曲という曲で濃い男どもとボディを絡ませあい、インタールードでも男にエスコートさせる。そして女同士で徒党を組む tr.11 では、圧倒的なしなりを見せつける。男を寄せつけようとはしない、つけいる隙がない。ボディが絡んでも、足は絡ませない。

そしてまたソロの活動に戻った安室は、打算的な女性を描いた知的かつ冷たすぎるシングル 「Put'Em Up」 を届けてくれた。チープな歌番組で歌われたそれに、ただとにかく引き寄せられた。小さなボディから繰り出されるアクションには、確実な 「タメ」 があった。その蹴りを喰らいたいと思わせた。

そう、だからここでのし上がった安室は猿山を征する猫なのだ。そしてその山の頂からふと周りを見渡してみても、同じような山も猫もボスも立ってはいない。ましてや豹柄の衣装をまとうようなイミテーションには、初めからそこにはいなかったようにして一瞥をくれてやることもなかったのだ。

Best Track
tr.5 「We got time」
一曲を選ぶのは難しい。どの曲を聴いても、そこにいる安室はかっこいい。だから、その中でも異色な tr.5 に耳が奪われる。 m-flo と見まがうポップさを借りて、今まで見たことのない女性がそこにいる。トラックのチューンもボーカルのそれも、とにかく素敵。

cf.
SUITE CHIC "WHEN POP HITS THE FAN" P:2003 CCCD
安室奈美恵 "Put'Em Up" P:2003 CCCD