2003年12月06日

Sugar High / 鬼束ちひろ (2002)

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汝犯すべからず。背徳である姦通を穢れたものであると騙るのは容易なれど、魂なる自らの幻想にすがる姿を嗤う者に下される槌は、不可視だろうともやがての雷を導く道となる。雪原の断面に塵は層となり、奥に宿る花弁を幾重にも守りて貫かんとする俗欲の熱を清らかに融かしゆく。

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僕はまだ、このアルバムの一曲一曲を識別できていない。収録曲全てがシングル未発表であり、また後にシングルカットもされていない。 9 曲があるべくして収められた一つの形であることを意味し、ピースとして切り売りの出来ないホールであることがわかる。

道を外すという言葉は、道という前提を踏まえた者だけに許されたい表現だと思っている。 Sugar High での鬼束は、これまでに踏まえてきた楽曲重視という道を外しながら、堕ちつつも縁を足の指で挟むかのように音を渡り歩いている。 Sugar がそれを意味するスラングでもあることを考えると、何かが心のそこらじゅうにあるエッジに当たってしまう理由も、かぶりきれない快楽の向う側にあるような距離ではあるが、見出せるような気がしてはこないだろうか。

自らのディケイドをふり返れば、想像上の存在でしかなかった異性の持つ深淵を直接的にまた間接的に見せつけられ、その毒に幾たびか中てられてきた。欲した水は強炭酸を有し、この喉に焼け跡を残した。ありもしない火傷などは思い込みの幻想でしかないが、それでもまだ、遠隔操作の疼きが引き起こされる。

一度知ってしまったものを切り離そうとしては失敗の時間を重ね、それでいながら自らの保身を図り、擬似的に遠いところに求めようとしている。そうして生々しい言葉と、不格好になりかねない若さとのアンバランスを追いかけようと、個別に切り出しようのない鬼束の声にすがっては、それは幻よりも現実的な、かりそめの慰めでしかないと思い知らされて夜を重ねるのだ。

嫁聴け本編
vol.68 Sugar High / 鬼束ちひろ (03.07.12 issue)

cf.
鬼束ちひろ "Sugar High" P:2002