2003年08月26日

Home / SIMPLY RED (2003)

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好きになるきっかけは、予想できない伏線とともに。

断続的な渋滞とつながりの悪い信号、そして自分の選択ではあり得ない BGM のラインナップとで疲れ果てていた。三人いた同乗者を降ろした後の運転は、何度自分の頬を叩いても、気づくたびに前を走っているトラックとの車間が詰まっていた。脳がうつろになっていたから、目がうつろになっていることに気づかない。一人になってからは音楽を聴こうという気にはならなかったが、命の危険を感じ、赤になる信号で止まるのも早々に、 CD ホルダーをめくった。

きっとお粥のような音が欲しかった。陽は沈む直前で、運良く環七を南に向かっている。いくつか越える陸橋のカーブで、秋を交えた夏の夕陽がスモッグの膜を受けてにじんでいた。過去には似たような光を受けたことが何度もあるはず。寝不足と体力の消耗と運転の緊張を解きほぐす、身体に染み渡らせる音、戻っていくための音が欲しかった。

「あぁ、こういう時のために、これは」

過去の自分のちょっとした行動に、何かの巡り合わせを大げさに感じとる瞬間。白いレーベルに大きな文字でタイトルが記されたディスクを取り出した。車に積んでから以降、聴く機会にほとんど恵まれていなかったアルバム。書かれていたのは 『Home』 の一語だった。

家から離れる気分転換の旅行。そこでも取り込んでしまった疲れを鎮めて、再び明日からの疲れを背負うためのホームまであと 30 分。陸橋の頂上から見下ろしたいくつもの信号が色を増す逆光を交え、何か自分にとって都合のよい世界へのシグナルに変わるかのように見えた。

cf.
SIMPLY RED "Home" P:2003