2010年05月15日

VOCALIST4 / 徳永英明 (2010)

asin:B003980YLK:image名曲は歌い継がれるもの。徳永英明のVOCALISTシリーズはその「当たり前の精神」に立って作り込まれた作品集だと思いながら聴いている。

NHKの演歌・歌謡曲番組を聴いて育った身からすれば、オリジナル以外のアーティストが歌う曲ということに対して、抵抗はなくなっている。それは既に歌い手が死去していたり、第一線を退いていたりするからだ。しかしオリジナルアーティスト第一主義の「J-POP」の世界では、まだその「歌い継ぐ」精神は導かれていない。

歌はまず初めにそれを歌い初めたアーティストの声に宿る。それが広く歌い知らしめた上で「名曲」の座を勝ち取る。しかしそこで終わりだろうか?

カラオケに語られるまでもなく、歌は「全ての歌い手」によって自らのものとなり、歌い初めたアーティストの残り香ともいえる印象によって時代に削られることなく残り続けてゆく。その残り香は最初の固定観念として人の頭に定着される。しかしそれが個々の心に「歌」として定着したのであれば、その時点で歌は聴き手の所有物となる。

スタンダードナンバーとして歌い継ぐボーカリストは、その所有物を想定しなかった角度から引き出す存在としてあるのではないだろうか。それは個々の心から歌への思いを引き出すベクトルであったり、歌手自身の持つ魅力から引き出される歌力(うたぢから)であったりもする。ヒットチャートという生ものに埋もれてしまう曲をその落ちてゆくだけの沼から引きずり出し、歌い継がれる曲として定着させるまでに引き上げる努めがある。徳永英明はその努めに対して真摯に向き合い、J-POPから歌謡曲に至るまでの「この先も生き残る楽曲」を取り上げ、歌い出していたのだろう。

歌は光を当てる角度を変えることによって輝きを変える。そのことを教えてくれる存在としてVOCALISTシリーズは成功していると思えるのだ。