詠む音楽

Early In The Morning

James Vincent McMorrow (2011)

烟る街。それは煙か霧か。視界はどこまでも開けず、自分の足元すら覚束なくなってくる。何かをつかもうと伸ばした腕の行く先すらもどこかへ消えてしまうかのように。心許ないのは視界を塞ごうとするこの白い靄のせいか。

はかなくも地上の民。吐く息もまた白く、どこかへ行こうとする目的も失ってしまった。終着点はもはやどこでもよい。全てはただ独り。食す、溶かす、排す。人としてあまりにも原始的な行為と日々の中では、時間の経ち方すらも忘れてしまう。

足枷なら無い。気の向くままに向かえばよい。しかしどこへ。与えられずの行き先と、とどまることを許さない時の脅迫状。怯え、逃げ出す先すら見えはしない。それでも遁走。闇雲な足の運びはただ重く。嗚呼、絡め取られるな。思った瞬間の転倒。やはりどこに行くこともできないのだ。この白い闇の中、さらに色を深くする吐息一つ。立ち上がり、うすのろな歩みでたどり着くは船着場。

川の向こうに何がある。慣れない手つきの櫓。嗚呼、流れ出した。歩みを持たず、流れに逆らわず。求めていたものはこれか。これなのか。自らを放り投げ、運ばれていくだけの物となる。意思を持たない一塊の石。流れていけ。そしてやがてどこかへとたどり着く頃、再び意識を取り戻せ。明瞭な思考と頑強な身体を持つ人となれ。闇をまとうことなき人となれ。