詠む音楽

平凡

大江千里 (1988)

ふと思い出してみた
10年前が本当に10年前なのかも分からないくらいに
無益に過ごした10年
あの時の僕 はまだ彼女の取扱説明書を読解する術も知らず
途方に暮れているうちに彼女が暴走した
仲の良い友人、親しくしていた後輩、Web上だけの付き合いだった少し遠い友人
その全てと身体で交わっては僕を遠ざけた
取説の読解法を読み当てる間もなく僕は一人になっていた
多分10年くらい前の話

インターネットとやらは10年の時をいつまでも繋いでいるらしく
あの彼がまだその界隈で生きていることを知った
何かスノッブなことを酒の肴にしては一期一会などと洒落込んでいた
まだ何もかもが若かったあの時に満たそうとしていた時間、そして人間はもう不良債権にもならない
それでも自分一人になってみては全ては負の債務
もうどこにも繋がることのないネットワークの外側で
僕は10年前(多分)の自分の姿を思い出せずにいる
誰かの姿に隠れるような振りをして
今の僕はもうあの頃からすっかり切り離されて生きている