詠む音楽

ラブリー

小沢健二 (1994)

ハッピーの仮面、どこから語ろうか
蒸し暑い昼休み、便器の中に何億かの精子をぶちまけ
その上に座ってくうくうと眠った
誰かの目にはかわいらしい寝顔
誰が見てもただの疲れたサラリーマンの寝顔
30分もくうくうと眠り
水を流して仕事に戻った
ベルトを締めて大きなのびをして
何事もなかったような顔をして仕事に戻った
だって別に何事もなかった

Life shall never come back.

思い出のかけらさえ残っていない僕のおばさんとやら
たぶんかわいかったんだろう僕の小さないとこを連れて
なぜだからわからないけれども勝手に死んだ

人生の大きな大きな舞台に立つ直前だった
カッコ29歳カッコとじ当時のいとこは
突然倒れて突然死んだ
葬儀で泣いてたいとこの父さん
半年後に病気で死んだ

「じゃ明日遊びに行くから」なんて電話をしていた次の朝早く
母さん、一世一代のビッグジョークで僕をたたき起こした
電話の後にじいさん
足を滑らせ風呂場で死んだ
なんだかよくわからないうちにコロッと死んだ
棺桶だけはジョークじゃなかった

こんなに仲の良い兄弟姉妹
こんなにたくさんいるせいで
何人もの左腕に不思議な傷が残っている
こんなにたくさんいるせいで
何人かが今日も薬でやられてる
頭を抱えて夜中にうめいている
ごめん母さん、こんなにめちゃくちゃで

で、かわいいかわいい僕のおいっこ
いや、めいっこ?
どっちだったんだろう
形になる前に死んじゃった

神様、ね、これなに?

みんな悲しんでみんな叫いてみんな嘆いて
で、なんで?
みんな笑っている

これからの命もそろそろの命も今晩までかもしれない命も
なぜかみんなみんな笑っている
バカみたいに笑ってバカみたいに普通に今日も生きている
くだらないいさかいを起こして
くだらない歌で今日もさわいで
くだらなかった今日の小さな満足で大きく息を吸い込んでいる

明日止まるかもしれない呼吸を愛し
墓石すらたててもらえずにいる呼吸を思い出し
誰もがつたない歩みで
後ろ指には無縁な今日を終えようとしている

Life shall never come back.

形になることは奇跡
教えてくれた僕のおいっこ
明日も道ばたのありをつぶして
彼の父さんと母さんを困らせる
笑って笑ってみんなを困らせて
送られてきた写真一枚、僕も笑って

全てのものは二度と戻らないから
生き残っている僕にピース
生き残っている今にピース
消えてしまった全てにピース
僕の周りだけ
それ以外は、ごめん

Life shall never come back.
Life shall never come back.
Life shall never come back.
Life shall never come back.