詠む音楽

東へ西へ

井上陽水 (1972)

私めのこの胸の空を渡っては下さいませぬかと
冀う者にかける憐れみもなく
雁はこれを拒んで嗤う
月もなし雲もなし標もなし
夙に野は芒わたる役目を果たしたというのに
風はいまだ南奴の邪言を残す
筋が通らぬ
当てられてみい、
命よりも重い羽がもげてしまう
拡げる広さもなし
休める湖水もなし
ただ一羽、群れよりさし出す見返りは何ぞと
引き留むる言葉をさし出す前に
呼び止めし月がしびれを切らす
おとといの風ならば騙されてもよかったものをと
言われ頭を垂れた意が
わかる今日がおとといと知る
夜の阿房がうるませて
しのばせた翼
返すところを知らず一涙