詠む音楽

The Sound of Summer Running

Marc Johnson (1998)

今年もあの風を釣り上げよう。

水面に落とした糸は何度かふるえ、こっちの岸に波を伝えて、あっちの流れに飲み込まれていった。本当に欲しい引きはこんなんじゃない。去年の竿は物置の奥にも見つからなかった。おろしたての竿は明日まで使える。

さそった友だちはみんなどこかへ出かけて、返事がなかった。たぶん明日も帰ってこない。高い雲がいつもより速く流れて、ゆうべの月に雲はかからなかった。だから明日までには絶対に引きが来る。でも明日になっても誰も帰ってこない。

釣り上げた風は陽が沈むまではどこにも逃げていかないけど、つかまえておけるバケツもかごもない。こんな話、誰も信じてくれないけど、今年も僕が釣り上げるからそれでいいんだ。