詠む音楽

旅路ニ季節ガ燃エ落チル

eastern youth (1998)

今日もまた、独り歩きのお疲れさま
帰り道の電車は、ピーク前の冷房で
鉄橋の下に映る夕陽はいつもの通り
球児が、逸れた球を追いかけ走る

フェンスを引きちぎらんばかりに
握りしめる子どもの瞳が
ホームに滑り込む俺を追う
10 年選手の錆びた空き缶は
また今日も、開かないドアのすぐそこに。
母親とつないだ手もふり払って
フェンスにつかみかかる

名なしの子どもへ
いつか光をはねるこの車両に任せるだけの、
暑さは恨むだけの、
名もない夏がやって来る

ああ、くすぶりながらも沈む背の向こうから
金網を越える力を忘れ
ただ恨めしげに、恨めしげに、
薄い手のひらを切り破る血は
まだきっと赤い。
痛みにはならない
淵をたたえた瞳が、閉ざされない火を放つうちは
まだきっと赤い

頬よりも赤く刻印
網膜を作る塩の跡が、残りわずかな空を
垂直に引き裂く
吊り革を握りしめる手の裡に
あの日の淵が、いつしか痛みとなり

明日の糧をあの子に、
誰かの明日を奪い取れるだけの手に譲る

独りで歩くことを知り、あの刻(いたみ)がしみる時が
やがて来るお前の番であると呟き
あと一駅
浅くなったこの瞳をそらし続けて