詠む音楽

Heaven's Kitchen

Bonnie Pink (1997)

目覚し時計も鳴らなかったから、毛布はきれいに体を包んでいる。少しだけ開かれた窓に、爽やかな朝日はない。薄ぐもりの空を予想すると、体を起こしてしまうのも何かもったいないような。

軽く寝返りを。

閉じたままの目であっても、再び眠りに落ちることはなく、スプリングに支えられて宙に浮く自分の体を想像する。それも軽い夢の世界。意識はだるく、身体の重さはない。重力との緩やかな衝突。反発で浮き上がり、すぐに吸い寄せられ、そしてはね返る。上下から左右へ。振り子の動きには遠く、慣性のクラッカーボールは弾けることなく、潰れるようにふれあい、たっぷりと力を吸い込んだボール−白球は歪みながら戯れに互いを退ける。出会いを繰り返すことはなく、次にぶつかるのは…また同じボールか。

 −また一緒にとけちゃおうか?

含み笑い、思い出し笑い、くすくすと。鏡をそこに置かないで。何を考えているか、すぐにばれてしまう。思いは全て顔に出るから、言葉にしなくてもわかってしまう。それが思い込みのノロケであろうと、何であろうと。取りあえず今は一人だと思い込んで、毛布にくるまり直そう。そのうちに、それが何か判らなくなって、もしかしたら一人ではなく、薄目を開ければ、膝を抱えて壁によりかかっているいつもの姿が映るかもしれない。狸寝入りをしながら、休日の朝くらいは一人になっている気分で。

何も見えないようにうつぶせ。

さっきは白球だったのに、今度は豆腐の衝突じゃないか。そして…崩れた。せっかくの夢見も台無しだ。

 −だめじゃん。

だれのせいだよ。…起きるよ。ったく、休みくらいはゆっくりと…OK、わかった、わかった。夢の一つも、見れないんじゃ、何の為に眠っているんだか。

 −夢よりも、こっちの方が楽しいでしょ?

もうわかったってば。散歩の前に冷蔵庫を開けて、いつものドリンクを。そこにある腕時計を取って。そうしたら起きるから。雨にならないうちに戻ってきて、それからもう一度、毛布に。

それでいいんだろ? そんな普通の休日で。どうせ雨が降るっていうなら、くもり空も味わっておこう。それから部屋でゆっくりと。