詠む音楽

Hallelujah

NOKKO (1992)

スローモーション。画面を縦に炎が落ち行く。ちょっとしたイタズラ心から、灯りがフレームアウトした瞬間に逆回転。コマ一つ一つの炎が連続して見せる種明かしを楽しむ。気まぐれな一時停止。無音のスクリーン。中心に固定される無音の炎。再生することでまた落ちてしまうはずのそれは、いつの間にか、それとも望んでいたからだろうか、気がつくと視界を占拠している。緩く、重い爆発音は目の中で。しかし画面は無音。

汗は拭けども拭けども流れ落ちて行く。真夏の密室。放置するだけで自然発生する炎。あの先に一つ。小さく。発見し、集中すると音を伴ない迫りくる。風鈴? 耳鳴り? 上がり続ける温度。止まることのない汗。気を失いたくとも、点が捉えて離さない。体内の秒針は緩く、動きは炎の迫る様に等しく、吹き出る汗が湿度に手を差し伸べる。揺らぐ陽炎の錯覚。体の中にある波に合わせてゆらゆらと。つきまとうもどかしさも、凝視すれば自らの作り出す温度。連続して流れるはずの時間に、意識だけは固定され、また繰り返す夏の正体。ただひたすらに部屋の中で対峙する音のない炎。爆発前の無音。

配置されたようで連続する時間。温度が導く勘違いは、その密度ゆえに短い。朝の夏に蓄積し、昼の夏に声を持ち、夜の夏に終わらないものがあると知る。終わらない熱にうなされるようにして、そしてまた朝を渇望し切望する。

時計の音と汗にまみれて、目覚め。密室の正体。充填された力、飽和寸前の大気。穴をあける針に動かされ、オーディオのスイッチを入れる。炎の解放と音の帰還へと合わせるタイミングに、ほころばせる顔一面の汗。張り付いたシャツをむしり、順方向再生。

発火。